「許諾権」「報酬請求権」「補償金請求権」の違いは?―諾否は言えずお金を請求するだけの権利もある!

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別記事にて、実演家(俳優やアーティストなど)には、様々な権利があることを紹介しました。ですが、権利を持っているからといって、すべての利用方法についてOKやNGを言えるわけではないんです。

えっ!?そうなの!?権利があるから、「使っていいよ」とか「ダメだよ」って言えるんじゃないの??

もちろん言える権利もあります。しかし一方で、使用料を請求できるだけのパターンなどもあるんです。

以下の記事で、実演家の権利は、ココロを守る権利「実演家人格権」オカネを守る権利「財産権」の大きく2つに大別できることを紹介しました。そのうち「財産権」は、さらに3パターンに分類できます。

1.【許諾権】利用にあたってOK・NGを言えるパターン

1つ目は、その利用方法について、使ってよいか、ダメかを決めることができる権利です。以下の権利が【許諾権】に該当します。

録音・録画権実演が、録音または録画されることについてOK・NGが言える
放送・有線放送権実演が、放送または有線放送されることについてOK・NGが言える
送信可能化権実演が、インターネット上にアップロードされることについてOK・NGが言える
譲渡権録音・録画されたCD、DVD、Blu-rayなどが世間一般に提供されることについてOK・NGが言える
商業用レコード貸与権市販のCDや配信音源がレンタルされることについてOK・NGが言える(発売から1年以内)

OK・NGが言えるということは…

・作品の利用について自分の思い通りにコントロールできる。

・使用料について、いくらならOK、いくらの場合はNGなど、交渉ができる。

・勝手にその行為をされたら(例えば勝手にネット配信されたら)、裁判所に訴えて差し止めることもできる。

👉実演家の権利のなかでは、かなり強力な権利です。

2.【報酬請求権】利用にあたってOK・NGは言えないけど、使ったならお金を払ってと言えるパターン

2つ目は、その利用方法について、OKやNGを決めることができないものの、使ったのであれば、使用料を支払うよう請求することができる権利です。

以下の権利が【報酬請求権】に該当します。

商業用レコード貸与報酬請求権発売から1年が経過した市販のCDや配信音源がレンタルされる場合に使用料を請求できる
商業用レコード二次使用料請求権市販のCDや配信音源が、テレビ番組のBGMとして流れたり、ラジオで流れたりした場合に使用料を請求できる
放送実演の有線放送による同時配信にかかる報酬請求権放送番組が地上波で放送されると同時にケーブルテレビでも放送される場合に、その対価を請求できる
リピート・ネット放送にかかる報酬請求権放送番組が製作した放送局と同じ局で再放送されたり、系列局で放送されたりした場合に、その対価を請求できる

OK・NGは言えないので、許諾権ほど強い力はありませんが、お金の請求はできるので、使用料を確保することができます。

3.【補償金請求権】許諾権を制限する代わりに補償金をもらうことができるパターン

最後は、権利が制限される場合に、その補償としてお金をもらうことができる権利です。以下の権利が【補償金請求権】に該当します。

私的録音録画補償金請求権個人的または家庭内やそれに準ずる範囲で録音・録画されることについて、OK・NGを言えない代わりに、補償金を請求できる(録音・録画権を制限)
放送実演のIPマルチキャスト送信による同時配信にかかる補償金請求権放送番組が地上波で放送されると同時にIPマルチキャスト送信されることについて、OK・NGが言えない代わりに、補償金を請求できる(送信可能化権を制限)
授業目的公衆送信補償金請求権インターネットで配信される授業において、実演が利用されることについてOK・NGが言えない代わりに、補償金が請求できる(送信可能化権を制限)

OK・NGは言えないけど一定のオカネをもらえる点では、報酬請求権と少し似ていますが、性質が異なっています。

報酬請求権
利用されたことについて使用料を請求できる
補償金請求権
許諾権が制限されることについて補償金を請求できる

4.まとめ

実演家の権利のうち「財産権」は3パターンに分類できる。

【許諾権】利用にあたってOK・NGを言えるパターン

【報酬請求権】利用にあたってOK・NGは言えないけど、使ったならオカネを払ってと言えるパターン

【補償金請求権】許諾権を制限する代わりにその補償としてオカネをもらうことができるパターン

👉権利を持つすべての利用について、OKやNGを言えるわけではない。オカネがもらえるように守られているだけのパターンもある。

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