「俳優やアーティストの‘著作権’」って言い方よく聞きませんか?
僕が大好きな女優・ぴよコリーヌが持っている権利を知りたいときには「著作権」を勉強すればいいんだよね!?!?
わたくしが、ぴよコリーヌ
実は違うんです。
ぴよコリーヌがお芝居をしたときに発生する権利は「著作隣接権」という権利です。
「著作権」と同じく「著作権法」に書かれているので、「著作権」を勉強していれば「著作隣接権」も勉強することができますが、「著作権」と「著作隣接権」では似て非なる別の権利なので、しっかり区別して勉強する必要があります。
ぴよコリーヌも含めた俳優、タレント、アーティストの権利を知るには、まずは「実演家」という言葉と「著作隣接権」という言葉が重要です。
1.「実演」とは
「実演家」を知るには、まず「実演」をチェック!
「実演」とは…
①著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること
②これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するもの
(著作権法:第2条(定義)1項三号にて規定)
①の「実演」の例
お芝居 | 👈台本(著作物)を演じてる |
歌唱 | 👈楽譜(著作物)を歌ってる |
ダンス | 👈振り付け(著作物)を踊ってる |
演奏 | 👈楽譜(著作物)を演奏してる |
朗読 | 👈小説(著作物)を読んでいる |
②の「実演」の例
モノマネ、マジック、腹話術など
👆著作物を演じているわけではないけど、芸術的な性質があるもの
2.「実演家」とは
「実演家」とは…
俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行う者及び実演を指揮し、又は演出する者
(著作権法:第2条(定義)1項四号にて規定)
実演家の例
実演を行う人 | 俳優、歌手、ダンサー |
実演を指揮する人 | オーケストラの指揮者 👆自分で楽器を演奏していない。でも、演奏している人(実演をしている人)を指揮している |
実演を演出する人 | 舞台演出家 👆自分で台本を演じてはいない。でも、演じている人(実演をしている人)を演出している |
著作権法の条文には、実演家の例として、俳優、舞踊家、演奏家、歌手と具体的な名称が書かれていますが、これはあくまでも例示です。なので、他ジャンルの方でも実演家になりえますし、また、プロである必要もありません。カラオケで歌ったりすれば、誰でもあっという間に実演家です。
3.「著作隣接権」とは
ぴよコリーヌが「実演家」だということはわかったよ
さすが、ぴよ君ですね。
では次は、「実演家」の権利は「著作隣接権」ということを押さえましょう。
ちょさくりんせつけん…???
音楽を表現する歌手や演奏家は、歌ったり演奏したりするときに、その表現に創意工夫をします。
脚本を演じる俳優は、その役をどのように演じるか、どのように気持ちを表現するか、一生懸命考えそれを体現します。
つまり、実演家は、著作物そのものを生み出しているわけではないけれど、その著作物を世の中に伝えるために、著作物を生み出すに近しい創作活動をしています。
そこで、著作権に準じるような権利「著作隣接権」が与えられています。
どんなに素晴らしい音楽も脚本もそれを表現してくれる人がいなければ、その素晴らしさを知ることは、多くの場合は困難です。世の中には、五線譜のフルスコアをみて音楽をイメージしたり、脚本を読んで脳内で再生できる人もいるかもしれませんが、やはり多くの場合は表現してくれる人がいてこそ。
レコード第59回日本レコード大賞を受賞した名曲 乃木坂46『インフルエンサー』も、楽譜をみて楽しむこともできるかもしれませんが、やはり乃木坂ちゃんたちが歌って踊って表現してくれてこそ、楽曲の魅力が爆上がりなのだと思います。
そういった役割を果たしている人たちに与えられているのが「著作隣接権」です。
著作隣接権とは
著作物を広く世の中に伝えるために重要な役割をしている人に与えられる権利
*著作物でなくとも芸能的な性質をもつものも含む
*著作隣接権は、実演家だけでなく、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者にも与えられている
4.まとめ
・俳優やアーティストは、著作権法上「実演家」と定義されている。
・ドラマで演技をしたり、フェスで歌を歌ったりすることは「実演」という。
・俳優やアーティストの権利は「著作隣接権」!!!!「著作権」とは別の権利なので要注意!
5.参考文献
・池村聡『はじめての著作権法』日経文庫2018
・加戸守行『著作権法逐条講義 七訂新版』公益社団法人著作権情報センター2021