「著作者」人格権と「実演家」人格権って違うの!?ー種類&内容が異なる!

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ぴよ君。

実演家のココロを守る権利として「実演家人格権」があるけれど、著作権法には「著作者人格権」というのもあるんですよ。

ちょさくしゃ…人格権?実演家人格権と違うの?

字面も中身もとても良く似ていますが、微妙な違いがあり、意外とその違いが大きかったりするので、混同しないように注意が必要です。

0.著作者人格権とは?

比較の前に、そもそも著作者人格権について。

著作者人格権とは…

著作者のココロを守る権利。氏名表示権、同一性保持権、公表権がある。

著作者と実演家の違いを一旦整理すると以下の通りです。

【著作者】著作物を作った人↔【実演家】著作物を表現する

例)名曲「Love so sweet」の作曲をしたyouth caseさんと作詞をしたSPINさんは著作者、歌う嵐さんは実演家。

「実演家」の詳細は以下を参照してください。

1.実演家人格権と著作者人格権は含まれる権利が違う!

実演家人格権と著作者人格権では、含まれる権利が異なっています。

実演家人格権著作者人格権
氏名表示権
同一性保持権
公表権×

著作者人格権には「公表権」があって、実演家人格権に公表権はありません。

公表権とは…

公表されていない作品を勝手に公表されない権利。公表するかしないかいつどうやって公表するかを決められる権利です。

0.で例に挙げた名曲「Love so sweet」はすでに公表されている楽曲なので関係ありませんが、発表前の作品と仮定すると、まったく無関係の第三者が勝手に公表してしまった場合、作曲したyouth caseさんは公表権侵害を主張できますが、実演家の嵐さんは公表権侵害を主張することはできません。

氏名表示権、同一性保持権についてはこちらをご参照ください。

2.「氏名表示権」は実演家と著作者で内容が異なる!

「氏名表示権」は、実演家にも著作者にもありますが、氏名表示の省略が認められる範囲が異なります。

実演家人格権の場合

氏名表示の省略が許されているのは…

実演家の利益を害することがないとき、または、公正な慣行に反しないとき

👆どちらかに当てはまれば氏名表示の省略がOK

つまり、利益を害する恐れがないとまでは言えないけれど公正な慣行には反しないよね、という場合には氏名表示の省略OK

(参考:著作権法 第90条の2 第3項)

著作者人格権の場合

氏名表示の省略が許されているのは…

著作者の利益を害することがなくて、かつ、公正な慣行に反しない

👆両方にあてはまらなければ氏名表示の省略はOKにならない

(参考:著作権法 第19条第3項)

結論…実演家人格権の方が、氏名表示の省略が許される範囲が広い!

3.「同一性保持権」も実演家と著作者で内容が異なる!

「同一性保持権」の場合も、著作者と実演家で、許される改変と許されない改変の範囲が異なります。

●許されない改変の違い

実演家人格権の場合

改変がNGなのは…「名誉や声望を害する」改変

名誉や声望を害するとは、客観的な基準を意味しています。実演家自身がイヤだと思っても社会的な名誉や声望を害しなければ改変可です。

(参考:著作権法 第90条の3 第1項)

著作者人格権の場合

改変がNGなのは…「著作者の意に反する」改変

著作者の意に反するとは、主観的な基準を意味しています。著作者がイヤだと思ったら改変不可です。例えば、漢字表記を旧漢字から新漢字に改変したときに、著作者が旧漢字じゃなきゃダメだ!と言えば変更不可ですし、逆に、新漢字でもいいよ~といえば変更可となります。すべては著作者の気持ち次第です。

(参考:著作権法 第20条第1項)

●許される改変の違い

実演家人格権の場合

改変がOKなのは…

やむを得ないと認められるとき、または、公正な慣行に反しないと認められるとき

👆どちらかに当てはまれば改変がOK

「やむを得ないとき」とは:CDやDVDを再生する際、使用する機器によって微妙に音色が違ってしまったり、画面に見える色合いが違ってしまうなど、どうすることもできない場合のこと

「公正な慣行に反しない」とは:放送時間に合わせて映画をカットする場合など

(参考:著作権法 第90条の3 第2項)

著作者人格権の場合

改変がOKなのは…

やむを得ないと認められるとき

(参考:著作権法 第20条第2項)

⚠️公正な慣行に反しなければ改変OKという条件は、実演家にはありますが、著作者にはありません。例えば、放送時間に合わせて映画をカットすることは、実演家人格権的にはOKだけれど、著作者人格権的にはOKと言えませんので要注意です。

3.まとめ

実演家人格権と著作者人格権を比較すると…

・「公表権」は著作者人格権にのみ認められている。

・「氏名表示権」と「同一性保持権」は両者に認められているが内容が異なる

氏名表示権同一性保持権
実演家・実演家の利益を害することがないとき、または、公正な慣行に反しないとき、どちらかに当てはまれば氏名表示の省略がOK・「名誉や声望を害する」改変がNG
・やむを得ないと認められるとき、または、公正な慣行に反しないと認められるとき、どちらかに当てはまれば改変OK
著作者著作者の利益を害することがないとき、かつ、公正な慣行に反しない、ときに、氏名表示の省略がOK・「著作者の意に反する」改変がNG
・やむを得ないと認められるときだけ改変OK

4.参考文献

・加戸守行『著作権法逐条講義 七訂新版』公益社団法人著作権情報センター2021

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