1.公演概要
仲代達矢役者七十周年記念ロングラン公演 『いのちぼうにふろう物語』
会 場 能登演劇堂(石川県七尾市中島町中島上9)
公 演 日 2022年9月4日(日)~10月10日(月・祝) 全30回
原 作 山本周五郎 新潮文庫「深川安楽亭」より
劇 作 隆 巴
演 出 林 清人
あらすじ 舞台は江戸深川―「島」と呼ばれる無法地帯に建つ一膳飯屋。老いた主人が、ならず者たちの親代わりをし暮らしている。誰もが足を踏み入れないこの場所に一人の青年が足を踏み入れ…。(能登演劇堂公式HPより引用)
2.能登演劇堂について
1995年に誕生した仲代達矢氏が名誉館長を務める演劇堂。
収容人員は651名。ほぼすべてが傾斜のある1階席ですが、左右にちょっと小上がり的な席が数席のほか、ファミリーシートもあります。
特徴はなんといってもステージ。ステージ後方に、大きく開く大扉があります。
この大扉によって、屋外までもが舞台の一部となり、舞台と自然が一体に!
3.能登演劇堂までのアクセス
アクセス方法概要
アクセス方法は、電車、車、観劇バスが案内されています
電車、車
劇場公式HPのアクセスをご参照ください。雑で、すみません。。。自身で体験していないもので💦
ですが、電車経験者からこんなアドバイスをもらいました。
・劇場最寄りの能登中島駅からは、徒歩20分、タクシー3分。タクシーを利用しようと思っても、いわゆる田舎駅なので、タクシーを捕まえるのは大変。
・和倉温泉駅であれば、温泉地だけあってタクシーは捕まえることはできるものの、ちょっと時間がかかる(Google先生情報によると、距離約12km、タクシー乗車時間約18分)。
➡金沢からのアクセスならば、観劇バスの方がおススメ。
このアドバイスをもとに、くまろみは観劇バスを選択しました。
観劇バス
出発地 | JR金沢駅西口 | JR七尾駅 | JR和倉温泉駅 |
出発時間 | 開演時間の2時間30分前 | 開演時間の1時間前 | 開演時間の50分前 |
金額 | 往復 3,500 円 片道 2,000 円 | 往復 1,200 円 片道 800 円 | 往復 1,200 円 片道 800 円 |
所要時間 | 約1時間30分 | 約30分 | 約20分 |
■予約方法
・事前予約が必要(観劇日の10日前まで)。
・能登演劇堂へ電話で予約。申し込みフォームもあるようですが、今回の公演については電話受付のみでした。
(能登演劇堂0767-66-2323/営業時間9:00~17:00/ 休館 月曜・祝日)
・予約時は、名前のほか、住所、電話番号、名前の漢字などが聞かれました。乗車券と振込用紙が事前に郵送されてきます。
・申し込みから乗車券&振込用紙の到着までは少し時間が空きました。9月8日申し込み→9月22日着でした。
観劇バス利用レポ(JR金沢駅西口発ver)
バスについて
一般的な大型の観光バス。長距離バスのようなトイレは無し。
乗降所について
金沢駅西口の団体バス乗降場から乗ります(振込用紙と一緒に届く乗車券に分かりやすい地図有)。西口を出ると、金沢駅を背に右斜め前に見えます。
乗降場までは屋根があるので、雨が降っていても心配無用。
乗車前のお手洗いは、金沢駅ビル内にもたくさんありますし、乗降所の近くにも公衆トイレがありましたので、こちらも心配無用です。
乗車時間について
公式ページの案内通り、約1時間30分でした。
厳密には往路復路ともに、若干早く着いて、実質1時間20分くらいでした。途中休憩なしです。
道のりについて
「のと里山街道」を走り、行程の半分くらいは、日本海沿いの道でした。曇天でしたが、それでも十分気持ちがよい道のりでした。びっくりするくらい海根っこを走りますので、日本海の景色を楽しみたい方は、行きは進行方向に向かって左側の座席がおすすめ。帰りは進行方向に向かって右側の席になりますが、夜公演の帰りは真っ暗ですね。笑
道中、山道も走りましたが、それほどカーブが激しい道ではなかったので、車酔いする方も極端に心配するほどではないと思います。とはいえ、1時間半ノンストップなので、心配な方は酔い止めは飲んだ方がいいです。
余談ですが、乗り物酔いしやすい方へお勧めアイテムが首掛け式の扇風機。超が付くほど乗り物酔いをする母の愛用アイテムです。自分の顔回りが換気されるだけで全然違います。気分爽快です。冷却機能はなくても大丈夫。首回りの換気さえ出来れば効果絶大です。
能登演劇堂到着後について
開演約1時間前に到着。エントランス空間では、地元の名産品等が販売されていました。
飲食可能なスペースもあり(喫茶コーナー有だが、現在休業中)、開演前にここで持参したおやつを食べて腹ごしらえをすることができました。
4.観劇『いのちぼうにふろう物語』感想(ネタバレあり)
すべては、2幕終盤、舞台後ろの大扉が開いてから感動につきます(いきなり終盤の話で恐縮です。。)
もちろん、1幕も2幕前半も素晴らしいところはたくさんあったのですが、この演劇堂の特徴でもあるステージ後方大扉が開いてからの、仲代さんも含めた大立ち回りは筆舌しがたいほどの感動が!
このシーンでは、安楽亭(店主仲代さん+世間のはみ出し者になってしまった若者たちが集う店)が、現代でいう警察的な『捕り方』に取り囲まれるものの、一人の若者を逃がすために、みんなが必死に抵抗する場面。
「御用だ、御用だー」と一面取り囲まれ絶対絶命!なシーンで、舞台上に大勢の捕り方が登場。そして、舞台後方大扉が開き、そこには、能登の大自然(森林)、ほんのり明るいたくさんの「御用」提灯、そして大勢の捕り方(地元エキストラの皆さま)が現れるのです!
提灯や捕り方の数に圧倒されるのはもちろんのこと、文字通り劇場の空気が一変!
一気に10月上旬のひんやりとした能登のキレイな空気がスーっと入ってくるのです。一定の換気はありつつも、2幕後半ともなれば劇場内は長時間締め切られ、空気が少し生ぬるくなりますが、そこにひんやりした初秋の空気が入ってくるのです。五感で空気の変化を感じます。
そして目に映るのは、現代のLEDライトの光とは全く違う、オレンジ色の温かい光を灯した提灯数々、それに照らされる能登の豊かな自然(夜公演なので、すでに夜は暗い時間)。さらに大勢の捕り方たち(エキストラの皆さまのお仕事、最高でした!)!
空気感、目に見える景色、すべてが一変し、「私、今深川にいる!?捕り方に囲まれた!?」と、江戸時代の深川安楽亭にタイムスリップしたかと錯覚するほど。
序盤からこのシーンに至るまでも、素晴らしいセット、素晴らしい役者のみなさんに引き込まれて十分その世界観を堪能していたのですが、大扉が開いた瞬間から、世界観に引き込まれたという次元ではなく、私、深川にいました。安楽亭の騒動の目撃者でした。
臨場「感」、ではなく、「臨場」。「観劇」ではなく「体験」。
十分、大きく心揺さぶられているところへ、より一層圧倒の追い打ちを掛けるがごとく、仲代達矢さんの、大立ち回り!!素晴らしい景色を背に、ステージの真ん中で凄みを利かせた決め台詞!!!圧倒されて感涙です。会場からも拍手が沸き起こっていましたが、思わず拍手とはまさにこのこと。
この劇場だからこそ、能登だからこその感動でした。
舞台に大扉があるだけではダメで、開いたときに目に映るもの、入ってくる空気、それが能登のものであることが必要で、だからこそ、能登で演じられることが必然な演目なのだろうと実感させられました。
また、この感動には能登の皆さんも不可欠だったと思います。
まずはエキストラとして出演されていた皆さん。あの場面であれだけの人数の圧倒を感じるにはエキストラ出演の皆さんがいなければ実現できなかったのではないかと思います。もちろん無名塾の皆さんだけでも圧巻なのですが、エキストラの皆さんがいなければ、あの圧倒的な感動はまたちょっと違うものになっていたと思います。
それから、劇場スタッフのボランティアの皆さん。東京から(同行の母は福島から)、はるばる能登に辿り着いたときの「ようこそ~」と温かなお迎え、落とし物を届けたときの親切な対応、みんなで公演を成功させようと一丸となっている雰囲気、それらすべてが、『いのちぼうにふろう物語』の「人間の温かさ」「どんな人生を送っていてもやっぱり誰かの役に立ちたいという想い」に、形は違えど根底でつながるものは一緒で、あたたかな歓迎→公演で感動→あたたかなお見送りの一連のココロの動きによって「あー――もう、能登にきてよかった!ここまで観に来てよかった!」という思いになりました。
再び『いのちぼうにふろう物語』に出会えるのはいつの日か分かりませんが、無名塾では、毎年、能登公演を行っているとのこと。
きっと『いのちぼうにふろう物語』だけでなく、すべての演目で、舞台の大扉を活かした公演が行われていることと思います。もちろん能登の皆さんも一緒に。
能登まで行くのは大変…と思う方たくさんいると思いますが、でも、遠方の人ほど行くことをおススメしたいです。都会の劇場でしか演劇を楽しんだことがない人ほど体験してみてほしいです。
3年後、無名塾は50周年、能登演劇堂30周年だそうです。今から胸が高鳴ります。
くまろみ的pick up 出演者
僭越ながら、くまろみが一番印象に残った方は(仲代さんは殿堂入りとして除く)、
【由之助役 中山研さん】
今風にいってしまうと「おネエ」的キャラクターですが、とってもチャーミングで、かわいくて、乙女♡
若いイケメンが美女子に扮しているのかと思いきや、無名塾さんのHPのお写真を拝見すると、良きお歳の雰囲気の方で。
しみじみ役者さんってすごいなぁ。。。と思います。そして、こういうギャップが舞台の醍醐味ですごく好きです。
この物語は、全体的におもたい物語だけれど、由之助の乙女加減が明るさをプラスしているようで、また、どこか救いのようで、私は、由之助の存在が大好きでした。
安楽亭の真のヒロインはおみつちゃん(店主の娘)だけれど、由之助は裏ヒロインに認定したいです(もちろん、おみつちゃんも存分にかわいいことは間違いない!)
5.最後に
長文に最後までお付き合いくださりありがとうございました!
まとめると…能登演劇堂、無名塾、金沢どれも最高でした。
皆さまもぜひ体験を!